Yorimichi #19:流山と浜松町の思い込み
「いらっしゃいやせー!!」
市川に住んでいた時に大好きだったお店を流山市で見つけ、吸い寄せられるように入店。
扉を開けると威勢の良い声が迎えてくれた。
声の主は、調理場の中で重そうな中華鍋を豪快に振るっている。
「何名様っスか!?…こちらへどうぞっ!」と、こちらも威勢良く案内してくれた色黒の若い店員を含め、店には合計3名のスタッフがいた。
「店長!!」私を案内してくれた色黒店員が、緊張した面持ちのもうひとりを連れて調理場へ入る。
店は私しかいないので、声が丸聞こえだ。
「この人、今日から入った新入りさんっス!」
「…面接したから知ってるよ!!」
新人は深く頭をさげた。
「よろしくお願いします!!!」
元気な店だ。気持ちがいい。
好物のスーラータンメンの大盛を注文する。
「スーラータンメン大盛っスねー!!」
色黒は私の注文を確認すると、そのまま厨房に入った。どうやら私のスーラータンメンは、色黒さんが作ってくれるようである。
あー、お腹すいた…。
「いらっしゃいやせーー!!」
再び店長の声が店内に響く。
客が入ってきた。小さい子を連れた家族だ。新入りが慣れない手つきで、冷たいジャスミン茶を用意する。
すると突然、調理場から叫び声が聞こえてきた。
「やべーー!!」と色黒の声。
「どうした!?」と店長の声。
「スーラータンメン大盛にすんの忘れたー!!」
…私の注文分だ…。
「なにやってんだよ!?」
「すんません…!!」
「…そんじゃあそれは、2番テーブルに持ってけ!」
「…あ!!…なるほどっスね!!」
全部聞こえているよ…。私の注文したスーラータンメン大盛は、スーラータンメン普通盛を注文した、後からきた家族連れのもとへ行くのだね…。
私が大盛を注文するような、アクティブな人間ではないと思い込んでいたのかな?
思い込み。
浜松町の安くて美味しい蕎麦の名店『蕎麦冷麦 嵯峨谷』の【あじご飯】を、味付けご飯と思い込んでいた私。
注文して出てきた【あじご飯】が、鯵(あじ)ご飯だった時に、思い込みの恐ろしさを感じた私。
あなたも、そんな思い込みをしていたのかな?
そんな思い込みをしていたかもしれない、色黒の可愛いハワイアンな女の子の店員は、しばらくしてから「たいへんお待たせしましたー!スーラータンメンの大盛っス!」と私の注文分を持ってきてくれた。
健康的に焼けた長い脚が、白いエプロンからすらりと伸びている。
黒縁眼鏡をかけた、とっても綺麗で華奢な女店長さんは、ジャスミン茶の注ぎ足しをしてくれながら「今日も暑いですね」と声をかけてくれた。色白の肌に、黒縁が映えている。
中肉中背、年配男性の新入りさんは、慣れない手つきながら、愛想良くお会計をしてくれた。
Yorimichi with 「カム・ゲット・イット・ベイ」Pharrell Williams