Yorimichi #16 豊島区で別れたんです。
人生に必ず訪れるものの一つに、別れがある。
たまたま居合わせた豊島区のカフェで、若いカップルの別れの場に遭遇した。
別れは次なる出会いの予兆なのだよ、と声をかけたいのを我慢しながら、私自身の辛い別れと彼等を重ね合わせながら、本日のコーヒーを味わった。
ワカレ其ノ弐
「血のサラダ記念日」
私はその時、鼻歌まじりでサラダを作っていたね。
レタス、トマト、キュウリ。
私が何をする時でも、あなたはいつも真っ先に先頭に立って、いろんな事をしてくれた。
瑞々しいレタスは、サラダボウルから溢れるくらい敷いたね。
私が道に迷いそうな時、いつもあなたは行くべき方向を指し示してくれた。
大き目に切ったトマトは、バランス良くレタスの上に並べたね。
あなたは嫌がらないで、よく私のハナクソを取ってくれたよね。
あなたとの突然の別れは、サラダボウルのスライサーでキュウリをサクサク刻んでいた時でした。
まさかあの、上機嫌に鼻歌を奏でていた時間が
一転して、あなたとの別れの時になるなんて…。
きゅうりがどんどん切れるスライサー。
鼻歌交じりで、きゅうりを滑らせていたから、私はあなたの事が見えていなかったんだね。
いつの間にか、スライサーで刻んでいたきゅうりから、あなたがはみだしてたんだ…。
ざく☆
気がついた時、あなたは、赤い涙を流しながら流し台の排水口へと流れていった…。右回転する緩やかな渦に、赤い足跡を残しながら、流れていった。
さようなら、私の『右手指先(約1mm)』
あなたが私と一緒だった証は、今でも私の指先に、ほんの少しの傷跡として残っています。
Yorimichi with 「Camp(ver.2010)」Caravan