Yorimichi #11:秋葉原のアウトロー
秋葉原にあるアメリカンなバーで、二人組の男達が海外のビールを飲んでいた。
そのテーブルに、目つきの鋭いもう一人の若い男が合流する。
その男は、すでにビールを飲み交わしていた二人に軽く会釈をすると「隣の店にヤツらがいます」と小さな声で言った。
私は偶然、そんな三人組の近くのテーブルで、この店の人気だという、レモンビールを飲んでいた。
「…そうか…。やつら、2人、か?」
「はい。2人です。」
男達は顔を見合わせた。
途中から入ってきた若い男は、細身で長身。切れ長の目は、夜行性の肉食獣を彷彿させる。
私からよく見える角度に座っている男は、全てを見透かす水晶の様な丸い目をしている。中肉中背でおそらく最年長。
たくし上げたシャツからむき出しになっている筋肉をみると、それが素人のモノでない、日々鍛錬された代物であることが分かる。
もう一人の男の顔は、私からは見えない。
「この先のメイドカフェの女が、仲介役のようです」
「…仲介役?」
水晶まなこの男がタバコに火をつけながら怪訝そうな顔で聞き直すと、顔の見えない男が答えた。
「運び屋ですよ、そいつは」
水晶まなこの男は溜息と一緒に煙を吐き出し、「若いだろうに親不孝な…」と呟いた。
しばらく後、私がレモンビールを半分程飲んだ頃、切れ長まなこの肉食獣が「動きがあったようです」と言った。
よく見ると、耳にイヤホンをつけている。そこから何らかの情報が入ったのだろう。
「動いたか…」
顔の見えない男は静かに腰を上げた。
「お前達…」
最年長と見られる水晶まなこが改まって話し出す。
「この酒は、俺たちが交わす最後の酒かもしれん。そうはなりたくないがな…。」
2人は黙って、飲みかけのビール瓶を見つめている。
「くれぐれも命に気をつけろ。こんな事言うべきじゃないんだろうが、俺はお前らに、生きて欲しいんだ」
3人の男達は少し切なげに微笑み合いながら乾杯を交わし、ビールを空けた。
そして、颯爽と店の外へ飛び出して行ったのだった。
…という話だったら、あの3人組はおそらく警察の方か、諜報員か…。
だが、現実はこうだった。
秋葉原にあるアメリカンなバーで、二人組の男達が海外のビールを飲んでいた。
そのテーブルに、目つきのいやらしいもう一人の若い男が合流する。
その男は、すでにビールを飲み交わしていた二人に深々とお辞儀をすると「隣の店にかわい子ちゃんがいます」と大きな声で言った。
私は偶然、そんな三人組の近くのテーブルで、この店の人気だという、レモンビールを飲んでいた。
「…マジか…!何人組?」
「2人組みです。」
男達は顔を見合わせた。が、ナンパする度胸が足りなかったのか、その話はそこで終了。
途中から入ってきた若い男は、細身で長身。細長いの目は、新幹線の100系を彷彿させる。
逆に、新幹線0系の様な、丸い目をしている最も年配と見える男は、ずんぐりむっくり。
↓新幹線100系と0系
たくし上げたシャツからむき出しになっている脂肪をみると、それが健康なモノでない、日々の不節制の代物であることが分かる。
もう一人の男の顔は、私からは見えない。
「この先のメイドカフェの女超かわいいんすよ!チューしたいっす!!」
「…ちゅう?」
目の丸い新幹線0系の男がタバコに火をつけながらいかにも下衆な顔で聞き直すと、顔の見えない男が答えた。
「メイド好きなんですよ、こいつは」
0系は息を荒くしながら煙を吐き出し、「若いのにいい趣味してるな!!」と叫んだ。
しばらく後、私がレモンビールを半分程飲んだ頃、細長まなこの新幹線100系が「この時間もやってるメイドカフェがありました」と言った。
よく見ると、手にスマホを持っている。そこから何らかの情報を入手したのだろう。
「あったか!!ガールズバーじゃねえよな!?」
顔の見えない男は勢いよく腰を上げた。
「お前達…」
最年長と見られる0系が改まって話し出す。
「お前達が結婚したらそうそうこんなに飲みには行けなくなるぞ。そうはなりたくないがな…。」
2人はヘラヘラ笑いながら、飲みかけのビール瓶をプラプラさせている。
「くれぐれもカミさんには気をつけろ。こんな事言うべきじゃないんだろうが、俺はお前らと、ずーっと一緒にこんな感じでいたいの!」
3人の男達はいやらしくにやけながら乾杯を交わし、ビールを空けた。
そして、颯爽と店の外へ飛び出して行ったのだった。
そんな光景を、冒頭の様な感じに見せてしまう雰囲気のあるお店、秋葉原の、cafe & music bar《PLAYER》 に寄り道してました。
Yorimichi with 「Misery」 Maroon5