よりみち日誌

記録しなければ忘れてしまう寄り道にこそ、感動の物語があるのではないでしょうか。

Yorimichi #7:新郷村唯一の信号

2015年7月現在、新郷村には、信号機がひとつしかない。

つまり、2015年7月現在、新郷村には、ひとつだけ信号機がある。


私は本当に運がいい。

日本刀のレプリカの傘を振り回し気味の人や、缶チューハイと濡れ煎餅を貪っている酔っ払いみたいな人達が、決まって私の隣に座る様に感じられる満員電車以外においては、運がいい。


その日も、運良く新郷村唯一の信号機が赤になり、数十秒そこに留まる事ができた。


「少し前まで、この、【しんごう村】には信号がありませんでした」運転席の地元の方が話し始めた。「しかし、村人たちの間で、村の子供達に信号のルールを教えてやらねば、彼らが村から出た時に困るだろう、という話になりました」


なるほど。確かにそれは困る。


「そんな時に、信号が必要な場所が見つかり、村唯一の信号機が設置されたのです。」


先人達の産物で、私達は生きている。

新しい発明も、先人達の耕した土壌から生まれてくる。

信号ひとつにも、後世の同郷者への想いがある。


居酒屋のトイレで時折見かける《親父の小言》の一文が頭をよぎった。

年寄りは敬え。


私は運がいい。

新郷村唯一の信号機が赤になってくれたお陰で、こんな逸話と感慨を得られたのだから。私達の一台前にいた他県ナンバーの車は、黄色の信号を無感情に通り過ぎていった。



新郷村の皆さんは、人口が増え、《村》が《町》になる事を望んでいないという。


それは、新郷村が、《信号待ち》になってしまうからである。




Yorimichi with 「Take five」The Dave Birubeck Quartet

Yorimichi #6:新郷村のキリストの墓


ゴルゴダの丘で磔刑になったはずのキリスト。実はその後、生きて青森県に来ていた。キリストは青森県のある村に渡り、106歳という天寿を全うした。

昭和10年、そんな仮説が、茨城県にある皇祖皇大神宮の古文書から浮かび上がる。

その後、古文書の関係者が青森県三戸郡新郷村を訪れ、キリストの墓を発見。

さらに、1936年には考古学者の一団が、なんとそこで「キリストの遺書」を発見する。


額に十字を書く風習、ダビデの星を代々家紋とする家がある…。

青森県三戸郡新郷村では、地域に根付いた文化としてのミステリーを感じることができる。


八戸方面から車を走らせ20分ほど、辺りは次第に緑が生い茂る神秘的な風景へと移ろい、何か得体の知れぬモノに見られている様な感覚に陥る。(…様な気がする)


仄かな霧に包まれた森林と田園を進む車中で、「見てください」と地元の方が前方上方を指差す。

次の瞬間、初入村の私達は絶句することになる。



八戸市から十和田湖を経由し、再び青森県へと道を延ばす国道454号線。指差された方向にあるものは、そこにある案内標識だった。

「……!!」

一同の言葉を奪い、混乱の極致へと誘ったその標識には、【ピラミッド/キリストの墓】とある。まっすぐ行けばピラミッド、右に曲がればキリストの墓。

自分達は今どこにいるのか…。


「間も無くキリストの墓に着きます」


「……!…………‼︎‼︎」


キリストの墓ふもとのパーキングエリアで、再び私達は言葉と平常心を失う事になる。



【キリストっぷ】。



営業時間は十字架ら3時まで…。


「今は開いていませんが、このお店の名物は、【キリストのハッカ飴】です」

「………‼︎」


お祭りの際は、「ナニヤドヤラー、ナニヤドナサレノ」という意味不明の節回しの祭唄が伝えられているとの事。(新郷村ホームページより)



踊る女性が、少し怒っている様に見えるのは気のせいか。


ひっそりと、しかし、強烈に神秘を放つ魅惑の村、新郷村。


八戸方面へお越しの際は、寄り道をオススメしたい場所のひとつです!




Yorimichi with 「ルパン三世のテーマ」SOIL&"PIMP"SESSIONS

Yorimichi #5:五戸町のケンタッキー



今週は三日間、青森の八戸エリアに行っていたので、しばらくそのお話を。


八戸市に隣接する、三戸郡五戸町。

ここにある、地元でガリモリと呼ばれる独特な焼きそばが美味しい。

商売っ気のないおばちゃんが、大盛りのやきそばを350円でだしてくれ、煮干し出汁のおでんを一つサービスしてくれる。(おでんは一個35円)

もしかして、三戸郡五戸町だから、3と5が中心の価格なのだろうか、今気がついたので、それは次の機会で聞いてみよう。


この焼きそば、お好みでソースか塩をかけていただくのだが、地元の野球部はソースを、サッカー部は塩をかける傾向があるとの事。

私はハーフアンドハーフでいただきます。


さて、この五戸町、とても坂が多い町なのだが、地元の方々を含む今回のお仕事のメンバー達と、少し町をブラブラしようという話になった。鱈腹かきこんだ焼きそばのカロリーを少しでも消費しようと。


やはり、地元の人の案内があると、外から来た人達には知る由も無い、その地その場の物語が聞けて面白い。


定食屋風の小さな店の前で立ち止まり、ここは五戸のケンタッキーと呼ばれています、と教えてもらった時、思わず財布に手が伸びた。

五戸のケンタッキー。

私だけだったら、必ず素通りしてしまったであろうこの店が、そんな呼び名で地元に愛されている物語。

これを聞いて食べずに帰れるかと、ポケットの財布に手をつけたのだが、生憎お店はしまっていた。あやうく、カロリー消費という目的を忘れてしまうところだった。

(次来た時には来たいなあ…)

また、次に立ち寄りたい場所ができてしまった。恐るべし、地元情報!


カロリー消費という目的は、その五分後に忘れ、私はこの地のもう一つの名物【馬肉】入りのメンチカツを美味しくいただいた。


Yorimichi with 「El capitan」 opm