よりみち日誌

記録しなければ忘れてしまう寄り道にこそ、感動の物語があるのではないでしょうか。

Yorimichi #9:恵比寿最古の定食屋とお地蔵様

恵比寿最古の定食屋『こづち』は、12時の時点で既に行列ができていた。



並んでいると、店内からおばちゃんがちょいと顔を出し、注文を聞いてきた。

「定食!」「肉どうふ!」「定食!!」

日替わり定食を注文する人が多いみたい。次は私の番なので、流れに任せて

「定食!」

とオーダーする。


中に入ると、カウンターでご飯をかき込む客達の勢いと、大人数の調理場スタッフの勢いが、梅雨時の少し憂鬱な気分を払ってくれる。


席に着くと、程なく定食が前に置かれた。

アジフライ、クリームコロッケ、ボリュームのあるご飯。

美味しい!

我が心の梅雨は、今明けた!と宣言したくなる。


それにしても調理場の方々の数が多い。

皆それぞれに持ち場の仕事を、手際よくこなしている。それだけ客も多いのだが。


さくさくのアジフライを味わいながら、客の数とスタッフの数を数え、割合を計算してみる。


スタッフ1人につき客3名。

なかなか贅沢だ。


ふと、埼玉県吉見町で寄り道した、北向地蔵を思い出した。



イボがとれる御利益があるという評判を聞き、イボに悩む同行者と共に、ちょろっと立ち寄った北向地蔵。

日本には、2万体以上のお地蔵様がいらっしゃる。そして、その中でも北を向いているお地蔵様は、千体程度と解説されていた。


ふむふむ。


熱々のクリームコロッケを頬張りながら、その時の事を思い出しながら、割合を計算してみる。


お地蔵一体は、およそ6千人の日本人を守ってくださっている。

(今度からお地蔵様の前を通るときは、手を合わせる事にしよう…)


コロッケの濃厚なクリームが口の中にとろけ出す。


そんなお地蔵様の中でも、北を向いているお地蔵様に出会える確率は…


再びアジフライに箸をのばす。


…5%!

(今度からお地蔵様の前を通るときは、どの方角を向かれているのか、注意して見てみよう…)


ご飯をかきこむ。


隣に座っている人は、ライスと肉豆腐を2皿食べている。

お店の人は、このお客さんはいつもこれなんだよ、と話していた。


(肉豆腐、美味しそうだな…)


今この定食屋で、一様にご飯をかきこんでいるこの人達が、またひとつ屋根の下で一同に会し、美味しいランチタイムを過ごせる確率…。

ほぼ “0” だろう。


貴重な時間の真ん中で、私はコロッケを食べている。


ちょっと幸せな気分になった、梅雨の真ん中。


Yorimichi with 「good time」Owl City & Carly Rae Jepsen

【番外】雨降りのお足元にご注意ください!

今日は、寄り道の話ではありません。


いつもブログで、様々なお話を読ませてくれて、様々な気づきを与えてくれる皆様に、どうしてもお知らせしたい事があるのです。


ここ最近、雨の日が多いですが、先日行きつけのスーパーマーケットで、こんな場面に遭遇しました。


買い物カゴを持って小走りで惣菜売り場方面へ向かっている人がいました。雨が降っていたので、片方には傘を、片方に買い物カゴを持たれていました。


その人が、惣菜売り場方面から、お酒売り場方面に方向転換した瞬間です。

足元が結構な勢いでツルッと滑り、その人の両足は、どちらとも床から50cmほどのところに投げ出されました。


つまり、その人は、宙に浮いたのです。


その2秒後くらいでしょうか、バイィ〜ン、という音が辺りに響きました。


バイィ〜ン、という音。

それは、その人が落下する際に、床と自分の間に咄嗟に挟んだ、クッション代わりの買い物カゴが歪んで奏でられた音です。


その方は買い物カゴに命を救われた形で、ワンバウンドして床に倒れこみました。

買い物カゴがかなり衝撃を吸収したと思われ、全くの無傷です。


誰も見ていないのに、きっと顔から火が出るほど恥ずかしかったのでしょう。

その人は起き上がりながら小さい声で、テヘペロ的な事を発していました。


その人とは、私であります。


そして、その翌日、同じスーパーに買い物に行ったら、私が舞った現場に、この様な記念碑が建立されていたのです。



ああ、私の昨日のジャンプは、やっぱり誰かに見られていたんだ。

恥ずかしすぎて、私がテヘペロ的な発言(動揺していたため、何を発したのか詳細の記憶無し)をしていたのも、見られていたんだ…。


私の恥が、この記念碑を建て、この記念碑が、次なる犠牲を抑止するのだ。


そう思うより他はありません。


皆様、雨降りの際は特に、お足元にご注意ください。


sutten kororin with 「メインストリート エレクトリカルパレード」shinichi oosawa

Yorimichi #8:神楽坂の蕎麦しみる昼下がり

ここ最近、鞄に忍ばせていた1冊の本。


読了したことから、彼とは今日でお別れだ。

私は明日から、別の本を鞄に忍ばせる事になり、彼は明日から、沢山の仲間達が住んでいる本棚で過ごす事になる。


そんな彼の名は、『ふるさとをつくる』(小島多恵子さん)。

情熱とバイタリティーで、ふるさとを元気にしていった方々のドキュメント。


親の仕事柄いわゆる転勤族で、幼稚園・小学校・中学校全てが二箇所ずつに分断されてしまった私からすると、ふるさとがあるという事はとっても羨ましい。


この本で取り上げられた皆様方は、きっと今もなお、ふるさとの為に魂を捧げているのだろう。

ふるさとに注ぐ情熱の質量に感服してしまう。


そんな中、今日の私ときたらこうだ。


お猪口に注ぐお酒の質量に完敗してしまい、二日酔いでフラフラ歩く神楽坂。

朝から何も喉を通らず、しかしいい加減、何か胃に入れなきゃまずかろうと腹空かしのウォーキングを試みていた。

時刻は14時45分。大抵のお店がランチタイムを終え、ディナーの仕込みに入っている。


ああ、これはまだ食べちゃダメよという、神様の思し召しなのかしら。


そんな思いがよぎった時、雰囲気のある蕎麦屋「たかさご」を発見した。


蕎麦なら食べられそうだ。

ランチは15時までと書かれている。


暖簾をくぐると、上品でこじんまりとした店内にクラシックの調べが心地よく流れる、素敵な空間がそこにはあった。

客はいない。



頼んだ「せいろ」を濃いめのつゆに少々くぐらせ、おろしたてのワサビと共に口に含むと、芳醇な蕎麦の香りが鼻に抜ける。


しみるなぁ。。。


酒に漬かって昏睡していた胃袋が、息を吹き返していくのがわかる。


次飲む時は、二日酔いにならない程度に抑えていこう。

そう思ったのが、もうかれこれ1,000回目くらいになるかなぁ。

なんて思いながら、蕎麦湯をすすった昼下がり。


Drink

南部美人《純米》(岩手)

銀盤播州《純米大吟醸》(富山)

石鎚《純米無濾過》(愛媛)

北雪《純米吟醸》(新潟)

鶴齢《純米吟醸》(新潟)

大坂屋長兵衛《大吟醸》(兵庫)




Yorimichi with「舟歌」チャイコフスキー